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オランダに仕入れに行ってきました。三年振りのオランダでしたが、スキポール空港に着くなり、自分がみるみる元気になっていくのが分かります。初めてオランダの土を踏んでから二十五年、一時期は本当にこの国が好きで好きで年に二回は必ず来ては運河沿いの通りを徘徊していました。今は前のような強い憧れの気持ちは大分失せましたが、それでもこの国の、特にアムステルダムの街の自由度の高さ、センスの良さ、オープンな雰囲気は健在で、パリやロンドンには無い魅力を求めては訪れたくなる場所です。
スキポール空港からアムステルダムに行くのに空港内の駅に行き、電車を待っていました。アムステルダム行きの電車がホームに止まっていたので急いで乗り込もうとすると、もう発車直前で、体の大きな黒人の駅員さんが僕の前に立ちはだかって、まるで相撲取りさんが押し出しでもするような感じで僕の方に迫って来て、ノーモア、ノーモア(no more)と言うのです。仕方なく電車に乗れず、ただ彼のその時の仕草が農場に入ろうとする牛を追い出すような、何処か牧歌的な垢抜けないかんじで、僕は、このおじさん面白いな、と思い、次に来るアムス行きの電車が、11時7分と11分に二本あり、しかも電車の種類が違っていたので、どちらが早く着くのか知りたく、彼の方にまた近づいて行きました。あのー、11時7分のと11分の電車ではどっちが早くアムスに着きますか、と聞くと、彼はホームを忙しく行き交う大勢の人を気にも留めず、何処か仕事を放棄したようなゆっくりとした口調で、11時7分足す70分は何時かな、と訊いてくるので、僕は12時17分ですか、、と返すと今度は、じゃあ11時11分足す25分は何時、と続けて訊いてくるので、僕もそれに答えます。彼は、小学校の教師が生徒を諭すような感じで、さて、どっちが早いかな、、と訊いてきます。大きな駅で突然に算数教室が始まり、体の大きな先生が何故か僕に算数を教えている。彼はもう駅員であることを忘れたかのように悠然と僕に話しています。彼が、11時7分足す70分は11時24分だね、だからこっちの電車だよ、と言ったその瞬間に向かい側のホームに勢いよく電車が到着して、彼はさも自慢げにそれを指差してみせる。僕は、彼の70分が実は17分だったことの驚きと、ホームにいた駅員さんの超然としたその話し方に呆気に取られ、あぁやっぱりオランダは不思議な、実に不思議な国だと納得していたのです。
オランダという国にいると、このように時として説明不可能な面白さに遭遇します。特にアムステルダムでは不可思議な人の風情を垣間見ます。そういう意味で、一度訪れると麻薬のように中毒性のある街です。