日本近代随筆選1〜3(岩波文庫)

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書名にあるように近代(明治)以降の日本の作家の随筆を集めたアンソロジーです。去年の秋、京都の「ホホホ座」で偶然見つけて買いました。昔の本が好きな私にはこのような本が一番です。夜寝る前や朝起きてすぐに一冊を手に取り、何となく開いては一編を読む。川端康成のような大家もいれば、飯田蛇笏のような渋い俳人の作もあり、音楽家の宮城道雄なども入っています。買ってすぐに読んだ内の一つは広津和郎の随筆、私は広津さんの大ファンですが、ここに収められていた文章の素晴らしかったこと。彼の随筆はまさに珠玉です。
今の作家の文章とこの本に収められているような昔の作家の文章の違いを説明するのはとても難しいですが、昔の物書きの言葉は重層的でニュアンスに富み、使われている言葉一つひとつが何処となく多面的というか、気を付けて読み進まないと読む側から大切な何かがこぼれ落ちていく。そんな気がします。それだけにこちらのほうも訓練が要るというか、慣れていないと読み辛く、うっかりすると書かれている言葉の表面だけしか拾うことが出来ない気がします。クラシックの三重奏や四重奏を聴いていて、主旋律のヴァイオリンの音を聴きながら同時に背後で鳴るヴィオラやチェロの音も耳でちゃんと聴けている、そんな感じに近いでしょうか。
もしご興味あれば、三冊のうち一冊でも買われてみて下さい。旅のお供にもぴったりです。
ただ一つだけ不満があるとすれば、私の好きな国木田独歩の作品が一つもないことです。入れて欲しかったですね。

便利な時代に抗う

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『オートメーション・バカ』(青土社) ニコラス・G・カー 著

以前にこの欄で紹介した『ネット・バカ』と同じ著者による本です。IT技術なしでは生活出来ない私たちが、最先端のIT技術によって知らずのうちに支配されていて、原題の 'The Glass Cage' が表すように私たち自身がこの高度極まりない技術によって、主体性を失いガラスの檻の中に閉じ込められていく、その恐ろしい様が詳細に綴られています、が著者のアプローチは極めて冷静、客観的でITを全否定するとかではなく、私たちが何気なく使用しているIT機器のその端末の背後で起きていることを実に細かく説いてくれるのです。
特に、最終章はいろんな思想家、哲学者の言葉が引用されており素晴らしい締めくくりとなっています。良い本は、最後でもう一回ターボが掛かって、読む者を更に遠くへと誘ってくれますが、この本もそうです。是非、是非、お勧めします。読み易い本ではないかもしれませんが、これを読まずにおいて、IT機器に親しみ続けるのは危険極まりないと思います。

今お勧めしたい一冊

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「一銭五厘たちの横丁」 児玉隆也 桑原甲子雄(写真) 岩波現代文庫

昭和十八年の戦争中のある日、出征軍人の留守家族を訪問し、戦地に送る「銃後」の姿を撮ろうと、在郷軍人会の案内で50数名の写真家が東京の路地を歩きます。そのうちの一人、桑原のライカによって撮られた99枚の写真が30年後の昭和48年に発見され、その写真を手掛かりに児玉が一軒一軒東京の下町を訊ね歩き、写真の中に写る人を捜しては、彼らの「その後」30年の人生を丹念に丁寧な筆致で書き留めていくと言うとても素晴らしい本です。30代で夭折したルポライター、児玉の、市井に生きる庶民が戦争に翻弄されながらも草の根のように逞しく生きるその姿に肉薄していく、その視線の奥には為政者に対する静かな抵抗が潜んでいてその眼差しは庶民を見つめ描写する時の確実さにも繋がっています。写真も素晴らしく、70年前の日本人の顔の美しいこと。児玉の手になるこの本の最後を読んでいて思ったのですが、本当に素晴らしい本はいつも終章に近づくと、読む者が瞠目せずにはおれないような文章密度でこちらに迫って来ます。まるでマラソンランナーが最後の直線に掛かると、体全体を振り絞り燃えるように駈けていく、そんな姿を目の当たりにしている印象を受けます。
浅慮の権力者が好き放題の最近に憤る方も多いと思いますし私もその一人です。是非皆さんにもこの本を手に取って頂きたいです。児玉がこの本の最後で危惧しているような未来が訪れないことを願いながら読みたいものです。 

ユニークなテーマ

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「新エディターシップ」 外山滋比古 著 (みすず書房)

久しぶりの本の紹介です。しかもまた「みすず書房」の本です。「みすず」の回し者でしょうか僕は。
この本、元々1975年にでた物の改訂版で、今読んでも全く古びておらず、私たちが日頃何気なく行っている知的活動を、広義の意味でエディターシップと名付け、人間はすべて生まれながらのエディターであるという主張の元、<編集=文化論>を展開しております。
僕自身小さな冊子の編集をしているのでこの本に興味を持ち読んだのですが、あらゆる職業の方、特に独立して何かをされている方にお勧めします。ただ、個人的に外山さんの日本語には一つだけ大きな疑問があり、余程本人にお手紙しようかと思ったほどです。何かって?文章中にやたらと改行が多いこと。ぼくはこれを、著者の無意識の逃げ、と読み取っています。今流行で乱発気味の新書を読んでいるような感じがして、「みすず」の本にしてはちょっと残念ですし、改行を多用することで、論中に矛盾があっても読者にはそれが分かり難くなっています。
とはいえ、そのことを差し引いてもとても良い本であるし、この「エディターシップ」という切り口がとてもユニークで他に類を見ない気がします。本屋で見かけたら是非手に取ってみて下さい。

Business English Verbs (英会話のテキスト)

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Business English Verbs by David Evans (Penguin Quick Guides)

今日は本といってもイギリス英会話のテキストです。実は週に一回だけ英会話を教えているので、ロンドンでたまに教材を仕入れます。日本ではアメリカ英語の教材が殆どで、イギリス英語専門の教材は少ないのです。このテキストはタイトルに見るように、短い会話や文章を学ぶことで、動詞の使い方を中心に自然で役に立つイギリス英会話を身につけるのが目的です。レベルは中級くらいでしょうか、高校一年くらいの英語力があれば十分です。会話が自然で短く学習し易いですし、会話内容がとてもユーモアに富んでいてお勧めです。とても小さく掌に載るくらいの大きさなので、どこででも勉強出来ますね。
当英会話教室はたまに生徒を募集しています。ご興味おありの方は、070-5149-0049 までお電話下さい。レベルは初、中級の方でイギリス英語を学びたい方です。アメリカ英語を身につけたい方には向いていません。授業料は安いです。